2014年4月29日火曜日

ミルクティーは和製英語?

今香港に来ているのですが、大家楽というチェーン店でメニューを見ていたら、ミルクティーにtea with milkという英訳がついていて驚きました。

英語ではミルクティーのことをtea with milkと言ってmilk teaとは言いません。日本語でも牛乳紅茶と言ったら何のことかわかりませんが、英語でmilk teaというのはそういう響きなのだろうと思っています。tea with milkであればふつうのミルクティーが思い浮かびます。

そういうことを知っている日本人が「ミルクティーは和製英語なんだよー」とネットにたくさん書いていますが、それも間違いだと思います。milk teaはアジアで広く通用する英語だからです。

世界的に有名なタピオカミルクティー(珍珠奶茶)は台湾の春水堂が発祥だと言われていますが、その台湾でもミルクティーと言えば完全に通用します。アジアの国々ではメニューにもmilk teaと書かれていることが多いのに、香港の大家楽のメニューにtea with milkと「正しい」英語が書かれていたので驚いたのです。

中国系移民が急速に増えているアメリカなどの国々では、いずれmilk teaも正しい英語になるだろうと思っています。(もうすでになっているかも。)

2014年4月20日日曜日

wantを使わずに要求する言葉

アメリカなど英語圏の国で何かを相手に頼む時に「want」を使うのはたいへんはばかられます。「I want a coffee.」とお店で注文してももちろん意味は通じますが、直接的でぶしつけに要求するような感じがするのは否めません。

英語には日本語のような多様な丁寧語はありませんが、遠回しに言えば言うほど丁寧になるという法則があります。アメリカ人は日本人のように曖昧な返事はせずにイエス、ノーがはっきりしているとよく言われますが、現実には相手を気遣ってとても回りくどい言い回しをしていると思います。

アメリカで何かが欲しいときは「want」と言わずに「would like」を使う方がいいです。コーヒーショップでは「I'd like a coffee.」が自然ですね。「I was wondering if I could have a coffee.」は仮定法まで使って最高に回りくどいですが、その分ものすごく丁寧です(笑)。

ただ、「フレンドリー」が対人関係のキーワードであるアメリカ社会において、丁寧な言葉は相手との距離を遠ざけてしまうので丁寧であればあるほどいいというものでもありません。相手や状況に応じてほどほどに丁寧なのがいいと思います。

私がもう一つアメリカで多用する言葉が「need」です。この言葉は何かが欲しいという自分の意思を直接的に言わずに「必要である」と若干遠回しに表現しています。

「need」には客観的にそれが必要な理由があるというニュアンスも感じられるので、例えば予約をキャンセルしたいときの「I need to cancel my reservation.」のように使える場面はとても多いです。

2014年4月8日火曜日

「金のしゃちほこ」は英語で?

朝日新聞DIGITALに「「金のしゃちほこ」は英語で? 辞書も記載、由来を追う」という記事が出ていました。

「名古屋城のシンボル「金のしゃちほこ」は、城内で「ゴールデン・ドルフィン」と英訳されている。「あの外見で、なぜイルカ?」と不思議がる観光客も多い。」

こういういいかげんな英訳は日本の観光地にはいくらでもあふれています。英訳者の個人的趣向でそうなったのだろうと思われるのに、その由来を追うことにどういう意味があるのでしょうか?

この記事によれば、新和英大辞典第3版(1954年)から「ゴールデン・ドルフィン」と英訳していて、名古屋城総合事務所がそれを参照したようだということでした。つまり、研究社の和英辞典を作った人が「金のしゃちほこ」をなんとか英語にしようとしてそう書いたというだけの話ですね。

しかし、この記事を書いた新聞記者は過度に研究社の辞書を権威化し、辞書に書かれているのだから「金のしゃちほこ」の英訳としては「ゴールデン・ドルフィン」が日本のスタンダードであり、その由来を明らかにしたいと一人で熱く思い込んでしまったようです(あいたたた)。

そして、国際日本文化研究センターの先生のコメントまで取りに行ったものの「ドルフィンと訳して紹介されているとは知らなかった。でも、イタリア・ローマのバルベリーニ広場のイルカなど、名古屋の金のしゃちほこを思わせる意匠は世界各地にある。違和感はない」という答えにならないコメントしかもらえませんでした。

「ゴールデン・ドルフィン」の英訳の由来が知りたいなら研究社の辞書を作った人にきくべきです。英訳の背景にあるものが文化ではなく英訳者の単なる個人的趣向なのだから、国際日本文化研究センターに尋ねても理由がわかるはずがありません。

しゃちという言葉が英語にはなかったので何か適当な生き物を探していたら、体の反り返り具合がジャンプしているイルカに似ていたからそれにしたくらいの理由ではないかと思われますね。あまりのどうしようもない記事に、さすがは天下の朝日新聞だなと今日も感心してしまいました。

2014年4月7日月曜日

英語で1年半をどう言えばよいか?

英語で1年半はa year and a halfだよと簡単に答えられる人が多いと思いますが、この表現は実は非常に奥が深いです。one year and a halfと言ってもいいのでしょうが、これはあまりよくないと言っている人がいます。one year and one halfやa year and one halfは通常使わないそうです。

これ以外にもone and a half yearsという表現もあります。yearsと複数形になるのがポイントです。1を超えたら2未満でも複数形というのはわかりにくいルールですね。one and one half yearsは賛否両論のようです。

この手の表現は人によって好みもあるようですが、とりあえず無難な

1年半 a year and a half / one and a half years
2年半 two years and a half / two and a half years
3年半 three years and a half / three and a half years
...以下続く

を使っておけばよいのではないかなと思います。私の一押しは全く異論の出ていない後者の定式「X and a half years」(Xはone, two,...)だけを覚えることです。